「生きもののうた」  詩:室生犀星  曲:寺嶋陸也


豊中少年少女合唱団第10回記念定期演奏会委嘱曲

初演 2012年4月15日(日) アクア文化ホール 指揮:西岡茂樹 ピアノ:寺嶋陸也

構成 ピアノ伴奏 おおむね2部合唱

作曲者からのメッセージ

生きもののうた

今年で亡くなってちょうど50年になる詩人の室生犀星(1889~1962)が、戦争中の昭和18年(1943年)に発表した《動物詩集》から、9つの詩を選んで作曲しました。詩集は、序文につづき〈序詩〉と春夏秋冬の4つのグループに分けられていますが、第1曲目に〈序詩〉をおき、あとはおおむね春夏秋冬の順に選んだものを並べました。

この詩集はこども向けに書かれたもので、詩人は序文で、詩を読むだけでなく、こんなふうに思ったことをそのまま書いてみることを読者にすすめています。大正時代、《赤い鳥》などこども向けの文芸誌がたくさん生まれ、詩人、作曲家がこぞって童謡を作り、その多くの優れた作品はいまでも歌い継がれていますが、戦争へと向かう社会の動きとともに童謡運動も衰退していきました。

《動物詩集》も、そういった流れの中でわずかに残った最後のともし火のように、私には思えます。〈序詩〉での、「生きもののいのちをとるな」という叫びは、国じゅうが戦争を賛美し、敵を殺すことを美徳とした社会への、詩人の精いっぱいの抵抗であり、未来を担うこどもたちへ向けられたメッセージであったのでしょう。

寺嶋陸也

1.序詞

2.紋白蝶のうた

3.鯛のうた

4.毛虫のうた

5.ばったのうた

6.とんぼのうた

7.いなごのうた

8.あひるのうた

9.雪はいきもののうた

全9曲 演奏時間 約17分